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【特集記事】鶴岡市伝統の「おひな菓子」で祝うひな祭り|思いが込められた美しい上生菓子。
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ほりえ
庄内生まれの管理栄養士ライターです。もともと自然が好きで、さくらんぼや芋煮以外にも、Uターンして感じた山形の魅力、話題のスポットからひっそりと隠れた名所まで地元民ならでは情報をピックアップ。おすすめのグルメ情報もお届けします。
山形県庄内地方の南部に位置する「鶴岡市」。
江戸時代には酒井家が治めた城下町、明治以降は庄内の中心的な都市のひとつとして、文化や産業などさまざまな面で地域を牽引してきました。
そんな鶴岡市では3月3日や月遅れの4月3日のひな祭りに、見るも鮮やかな色彩でどこか可愛らしさのある上生菓子「おひな菓子」をお供えする文化があります。
繊細な技巧が施され、上生菓子としてのおいしさも魅力のひとつである「おひな菓子」。
今回は100年ほど前からこのおひな菓子を作っているという1887(明治20)年創業の「木村屋」に伺って、その製作工程を含めて取材をさせていただきました。
1. 鶴岡のひな祭り
・酒井家が治めた城下町 鶴岡
鶴岡は酒井家が治めた城下町で、2022年には酒井家庄内入部400年となりました。
現在も19代目の当主が暮らしており、お殿様が暮らす町とも言われています。
いまも当時の繁栄を物語る品が数多く残されている鶴岡。
その中のひとつに豪華な雛人形や雛道具があります。
参勤交代によって江戸から、北前船によって京や大坂から運び込まれた雛人形は、酒井家をはじめとする旧家で、今もなお大事に引き継がれています。
毎年行われる『鶴岡雛物語』では、致道博物館をはじめとする施設で一般にも公開されています。
・鶴岡の雛菓子
「桃の節句」とも呼ばれる、女の子の幸せを願い、厄を払うという意味のある年中行事 − ひな祭り。
今でも雛人形を飾りお祝いしますが、その雛飾りに欠かせないもののひとつが「雛菓子」です。
全国的には菱餅(ひしもち)や ひなあられ、草餅や桜餅などをお供えするのが一般的です。
でも、鶴岡の雛菓子は、ひと味違います。
鶴岡の雛菓子は、さまざまな願いがこめられた「上生菓子」。
どうして、上生菓子が飾られるようになったのかというと…
その昔、鶴岡ではひな祭りに豪華な雛人形を飾り、多くの人に公開して家柄や経済力を示す文化があったそうです。
この時、雛人形と一緒に飾られていたのがこの雛菓子。
菓子職人にとっても、多くの人に自分の技を披露する絶好の機会だったようです。
そのため、菓子職人さんは買いに来られるお客さんの嗜好に応えながら、個性あふれる雛菓子を作り、その腕を磨いていったとも言われています。
昔は上生菓子のほかに、保存の効く干菓子を観賞用として作っていたようですが、現在は上生菓子が主流になりました。
そして、今もその文化が続いています。
現在では、9ヶ所のお菓子屋さんでおひな菓子を作っています。
また、鶴岡雛物語期間中には、おひな菓子作り体験教室を開催し、多くの人におひな菓子文化を伝えています。
2.雛菓子に込められた意味
鶴岡市は冬になると雪が積もり、厳しい寒さに見舞われます。
しかし、ひな祭りが近づく頃には少しずつ寒さが和らぐことから、おひな菓子を通して春の訪れを表現したとも言われています。
「つぶつぶの種が特徴のイチゴ」、「子どもの成長を願うニッキの香りが漂う竹の子」、「丸々としたかぶ」「うぶ毛をまとった桃」、そして、庄内柿、民田茄子など庄内の特産品など、果物や野菜、縁起物をかたどったおひな菓子は、春の訪れを待ちわびる雪国のひな祭りに彩りを与えます。
木村屋のおひな菓子をよく見てみると… 魚の切り身のようなものが入っています。
これは「桜鱒(さくらます)」。
実はこちらも春を表すおひな菓子のひとつです。
『ますます元気に』という意味が込められているとも言われますが、春になると産卵のために海から川へ上ってくる「桜鱒」にちなんで、春が訪れる喜びや期待に胸を膨らませる気持ちをお菓子に込めたのかもしれません。
その他にも縁起物として、「桃の節供」にちなんだ『桃』、すくすく伸びるようにとの願いが込められた『たけのこ』、「めでたい」を表す『鯛』などが並びます。
由来は諸説あるそうですが、それぞれ一つひとつのお菓子に意味が込められています。
さらに、「りんご」、「いちご」、「さくらんぼ」などの果物や「孟宗筍」、「温海かぶ」など山形や鶴岡の特産品が随所に散りばめられています。
職人さんの技術や遊び心がつまった「ひとつの作品」ともいえる「おひな菓子」。
丸みのある作りとどこか愛でたくなるような可愛らしいおひな菓子は、いただくのがもったいなく思えてしまいます。
3.木村屋のおひな菓子
では、実際に作られている様子を見てみましょう。
今回は1887(明治20)年創業の菓子店 木村屋で、おひな菓子を作る様子を見せていただきました。
取材当日はおひな菓子の販売前日ということもあり、なんと朝6時から準備をされていたそうです。
厨房では、ちょうど煉切の成形や装飾、箱詰めが行われていました。
【工程 ①】煉切をつくる
みかんの煉切を作っているところです。
こしあんの上に求肥(ぎゅうひ)を練りこんだ鮮やかな色味の煉切を重ねています。
求肥はもち米や白玉粉に水あめや水、砂糖を入れて作ったもので、煉切に加えると生地が硬くなりにくく成形もしやすくなるそうです。
私が作業の様子を見ていて驚いたのは、職人さんたちの流れるような手さばきです!
みかんのつぶつぶした皮の質感や房が隠れ見えるデザインなど、細部まで気を配った装飾を短時間で仕上げていきます。
その様子は見ていてとても鮮やかでした!
【工程 ②】寒天をかける
こうしてできあがった煉切に、次は溶かした寒天をかけていきます。
こちらはいちごの煉切に寒天をかけている様子です。
つぶつぶとしたいちごの質感や彩り鮮やかな赤色がとってもよく映えます。
寒天をかけることで、さらにつやと光沢のある仕上がりになります!
また、寒天をかけることによって、食べたときのくちどけや食感のやわらかさにもつながるとのこと。
自然なグラデーションがとても美しいですね。
【工程 ③】装飾
さくらんぼやりんご、いちごの煉切には、枝や軸をつけるなど、さらにきめ細やかな装飾をしていきます。
素晴らしい連携プレーと職人さんの繊細な手つきには、思わず息をのんでしまいます。
【工程 ④】箱詰め
次に見せていただいたのは、箱詰めの作業です。
出来上がったおひな菓子を麻の葉文様の箱に詰めていきます。
麻の葉は生命力が強くまっすぐに育つことから、「子どもが健やかに育つように」という願いが込めらているそうです。
【 完成 】
一つひとつ丁寧に作り上げて、完成したおひな菓子がこちら。
上品な見た目のなかに華やかさもあるおひな菓子の数々!
もともとひな祭りは子ども向けの行事ということもあり、あえて可愛らしさを残した作りにしているそうです。
精巧な美しさはもちろん、全ておいしく食べられる「上生菓子」というのも驚きですよね…!
木村屋では現在4種類(大・中・小・パック)のおひな菓子を販売しており、昨年は5,600箱ほどが全て完売するほどの人気ぶりだったそうです。
鶴岡市では毎年4月3日にひな祭りが行われるので、3月以降もおひな菓子が楽しめます。
売り切れてしまう可能性もあるので、3月3日のひな祭り分は1月末~2月中旬にかけて、4月3日のひな祭り分は3月中旬までに予約しておくと安心とのことでした!
尚、今年(2023年)の最終製造分は4月1日に店頭に並び、売り切れ次第販売終了となるとのことです。
店頭の販売だけでなくインターネットでも購入できるそうなので、気になった方はぜひチェックしてみてください。
4.雛菓子いろいろ
今回ご紹介した上生菓子のほかにも、さまざまな雛菓子があります。
取材させていただいた木村屋ファクトリーストアでも雛菓子のコーナーがありました。
こちらは、手土産にちょうどよいサイズのひなせんべいや干菓子。
淡い色彩がとてもきれいです!
お雛様をかたどった雛菓子や桜の花びらがモチーフになっているお菓子もありました。
春の訪れを感じるようなやさしい色合いの雛菓子が多く、明るくほっこりした気分になりました!
5.まとめ
今回は木村屋ファクトリーストアにお邪魔して、おひな菓子作りの様子とその歴史についてご紹介しました。
親しみやすさと色彩鮮やかなおひな菓子には、思わず見入ってしまう芸術性や磨かれた美しさを感じました。
また、おひな菓子の歴史を知っていくうちに、職人さんの技術の賜物であることや予想以上に大きな魅力のつまったお菓子であることが、今回の取材で一番に感じました。
木村屋社長の吉野さんは、「雛菓子をどんなふうに楽しんでほしいか?」という質問に、
「ぜひ雛段に飾って、見ておいしい、食べておいしい雛菓子を楽しんでほしい!」
と笑顔でおっしゃっていました。
丹精込めて作られた鶴岡伝統の上生菓子。
皆さんもぜひ一度召し上がってみてはいかがでしょうか?
6.駐車場
今回、取材させていただいた木村屋ファクトリーストアには、お店の前に駐車場があります。
取材時は雪がありましたが、32台ほど駐車できるスペースがあるとのこと。
鶴岡駅の周辺にも歩いて行ける木村屋の店舗があるので、お車や電車で来られた際もぜひ立ち寄ってみてくださいね。
詳細情報
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木村屋 ファクトリーストア
営業時間:9:30~18:30
定休日:水曜日
住所:鶴岡市覚岸寺字水上249-1
☎ 0235-23-4560
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