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- 【特集記事】400年前の醸造技術を今に繋ぐ。東北最大級の酒蔵資料館「東光の酒蔵」を訪ね、古に触れる。
【特集記事】400年前の醸造技術を今に繋ぐ。東北最大級の酒蔵資料館「東光の酒蔵」を訪ね、古に触れる。
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佐藤 昌子
エディター&ライター。オフィス マウマウワン代表。 山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、 印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイや リメイク等を通して『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

山形県は言わずと知れた酒どころ。吾妻連峰の裾野に広がる米沢市は、自然豊かで、米沢という字のごとく、米作りが盛んに行われてきた地域です。
ここに、安土桃山時代から酒造りを営む蔵元、小嶋総本店があります。
1597(慶長2)年に造り酒屋として創業。その長い歴史を体感できる、酒造資料館「東光の酒蔵」を訪ねました。
1. 自然と共生しながら酒を造る
代表の銘柄は「東光」。“米沢城の東側、朝日が昇る方角の酒”という意味を込めて名付けられました。
山形の豊かな自然と高い醸造技術のもとに造られるお酒はバリエーション豊かで、国内はもとより海外からも高い評価を得ています。
「東光 純米大吟醸 袋吊り 十八」は、世界最大級のワイン・日本酒のコンペティション「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2024」純米大吟醸部門で1位を獲得!
今、話題のお酒です。
※ 東光公式HPより引用
※ 東光公式HPより引用
小嶋総本店の日本酒はすべて醸造アルコールを添加しない純米酒のみ。「東光」は、仕込み一筋で酒造りに邁進してきた自社蔵人が醸し出す逸品です。
24代目蔵元が特に力を入れているのが、自然と共生する酒造り。地球規模の気候変動はお酒を造るうえでも大きな課題に。
酒粕や米ぬかを廃棄せず、すべて活用しています。
同地域にあるバイオマス発電所の協力を得て、牛糞に酒粕を混ぜてメタンをガス発生させて電気をつくることで、醸造する際に排出される二酸化炭素を実質ゼロに。
長く続く酒蔵だからこそ将来への意識を高く持ち、酒造りに取り組んでいます。
2. 「東光の酒蔵」とは
「東光の酒蔵」は伝統的な造り酒屋を肌で感じてもらおうと、1983(昭和58)年まで酒造りをしていた酒蔵を改造し、翌年オープン。
その後も折々に改修を続け、現在の形になりました。1200坪の敷地に500坪の建物が配置された、東北最大級の酒造資料館です。
軒先には「杉玉」が。
風格のある佇まいに期待感も高まります。
受付も趣があります。入館料を支払い、中へ。
・商家の佇まい
引き戸を開けると目に飛び込んできたのは復元した商家の住まい。
ここでは小嶋総本店の歴史が紹介されています。
大福帳が歴史の長さを伝えます。
住居部分は古い材木をそのまま使用しています。
34人の「飛騨の匠」たちにより、ボルトを使わない「くさび」工法で復元した貴重な建物。
大開口からは季節ごとに彩りを変える中庭を見ることができます。
小嶋家では「贅沢をしてはいけない」という代々の教えから富の象徴とされた松を植えることを禁じられてきました。
仕込み蔵へ続く入口に置いてあるのは、室町末期から桃山時代にかけて使われていた大甕 [おおみか](高さ106.2cm×直径/80cm)。
古備前焼の大甕は北前船交易で酒田港に運ばれ、最上川を上ってこの酒蔵にやってきたもの。
鑑定してみると、窯印から1585年孫兵衛作とわかったそう。
400年以上前の造り甕が存在することに驚きを隠せません。一升瓶で200本の量を造り、お城に納めていました。
・東北最大級の仕込み蔵
大正時代の原型を保つ仕込み蔵へ。
当時、お酒を仕込んでいた大桶が迎えてくれます。
仕込み蔵は、実際に酒造りを行っていた土蔵を改修したもの。ひと際目を引くのは、整然と並べられた多くの大桶。
その静かな迫力に圧倒されます。
蔵内は外気の温度とは一線を画すひんやりした空気が。
木桶は約110年前に作られたもの。
酒を仕込むうえで杜氏たちが最も恐れていたのは腐造でした。
木桶の中に火落ち菌が入ってしまうと醪(もろみ)が腐り、蔵全体の酒が駄目になってしまうことも。
2年腐造が続くと、どんなに裕福な酒蔵でも潰れてしまうと言われていたそうです。
腐造から守るため、桶には天然の防腐剤として柿渋を塗装していました。
昔は酒蔵にお抱えの桶職人もいたと言います。
案内してくれた女将の小嶋淳子さん。身長差で樽の大きさがわかりますね。
仕込み蔵に入るとすぐのところに日本酒ができるまでの工程を示した説明板があります。
その順序に従って、酒造りの工程や使用した古い道具などを見学することができます。
寒暖差のある自然環境の中で育てられた酒米を100%自家精米し、厚い地層を透過した水で仕込み、清浄な空気の中で低温長期発酵して造るお酒。
現在は機械を駆使するようになりましたが、酒造りへの思いは今も昔も変わることはありません。
「雪国のお酒はとても繊細。雪が降ることによって空中のゴミを吸着して沈めてくれるので空気が澄み、また、蔵の周りを雪が囲うことで一定の低温管理を可能にします。
天然の冷蔵庫みたいな状態ですね」と小嶋さん。
常設のシアターでは、小嶋総本店の歩みや酒造りの工程を知ることができます。
・造り酒屋の母屋
仕込みを見学した後はフリースペースで休憩を。
大正時代の建物。天井が高く、びっくりするほど開放的。
こちらは住まいだったエリアで、座敷などが再現されています。当時にタイムスリップしたような心地よさ。
吾妻山系から流れる伏流水を飲むことができますよ。
1918(大正8)年頃に購入したドイツ型のポンプも展示されています。
3. ショップ
併設する売店へ。
店内にはここでしか買えないお酒やお酒を使ったコスメ商品なども販売されています。
有料の試飲コーナーも充実の品揃えです。
(写真左から)「純米吟醸原酒東光」、ここでしか買えない御用酒屋の「献上酒」、酒粕を蒸留した粕取り焼酎がベースの「吟醸梅酒」。
エレガントな風味の梅酒は国内の梅酒大会で優勝しました。
(写真左から)農薬不使用で育てた酒米を使用「東光 純米大吟醸 アイガモロボ農法」、酒粕を活用したエネルギーで造りあげた「東光 with green (ウィズグリーン)」。
創業当時の製法「甕仕込み」に原点回帰し、生まれた日本酒「東光 安土桃山」。
ノンアルコールで無添加の甘酒は毎日の元気をサポート。(各種432円)
ノンアルコールの「酒粕ジェラート」もぜひ食べてみたい!(400円)
(写真左から)お土産にぴったり!スキンクリーム「雪女神」(100g 2,530円)、
フェイシャルマスク(3枚入 1,485円)
4. メッセージ
400年以上の歴史を紡ぎつつ、時代のニーズに求めて進化し続ける老舗酒蔵。
うかがった日は、利き酒を楽しむ海外からの観光客の姿がありました。
小嶋さんからメッセージをいただきました。
「当館は雪国の造り酒屋を丸ごと紹介している施設です。お酒を楽しみながら、歴史に触れていただければと思います」。
5. 基本情報
【開館時間】
9:00~16:30
【入館料】
・一般:350円
・中高校生:250円
・小学生:150円
※20名以上は50円引き
※料金は税込み
※見学なしで買い物だけでも可能 (入口別)
【休館日】
年末年始休館日 12月31日~1月2日
※冬期間の1月~3月まで毎週火曜日休館
詳細情報
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酒造資料館 東光の酒蔵
【お問合せ】
0238-21-66010238-21-6601
〒992-0031
山形県米沢市大町2-3-22
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