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【特集記事】オリエンタルカーペット工房見学|90年の時を織る、一生モノのじゅうたんとめぐり合う旅

naka

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山形県在住のライターnakaです。 大学時代を山形で過ごし、県外に就職しましたが結婚を機にまた山形に戻ってきました。 山形は雄大な自然と美味しい食べ物にあふれた宝箱のような場所です。 まだまだ知られていない地元民ならではの旬な情報を中心に、山形のとっておきの魅力をお届けします。

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皇居新宮殿、歌舞伎座、さらには海を越え、バチカン宮殿まで―

国内外の名だたる空間の足元を彩るじゅうたんが、実は山形県の小さな町で作られているって知っていましたか?

山形県南東部に位置し、「高品質なものづくりの町」として知られる山辺町。

この町で90年以上にわたり最高品質のじゅうたんを作り続けるのが“世界に誇る工房”オリエンタルカーペットです。

日本で唯一、織りはもちろん、糸づくりや染色、仕上げからメンテナンスまで一貫して自社管理で作り上げられるじゅうたんは、各方面から高く評価され、世界中から注文が舞い込みます。

今回は、世界レベルのものづくりを間近で体感できる工房見学の様子をご紹介します!

1. オリエンタルカーペットとは

・中国の伝統技法×日本人の感性で紡ぐじゅうたん

1935年、山辺町の一角で、ひとつの挑戦が始まりました。

冷害や凶作、金融不安。

当時の東北を襲った厳しい時代環境の中、

「働き口の少なかった地域の女性たちが安心して働ける清潔な仕事場をつくりたい」

創業者のそんな切なる想いを込めて設立されたのがオリエンタルカーペット株式会社です。

工房の近くを流れる「須川」は酸性の川で、染色に適した“恵みの川”。

須川

この地で木綿織業を営んでいた創業者・渡辺順之助氏は、中国からじゅうたん職人を招き、2年2ヶ月にわたり技術の指導を受けます。

ペルシャじゅうたんに比べ、重厚な中国緞通 (※)の特徴に、日本人特有の繊細な手仕事と美的感性が加わったのがオリエンタルカーペットのじゅうたんの特徴です。

※緞通 (だんつう):手織りじゅうたんの名称。ペルシャじゅうたんと並び、世界最高級じゅうたんと言われている。

・時を重ねる北欧風デザインの社屋

オリエンタルカーペットは、JR左沢線「羽前山辺駅」から徒歩で10分、山形駅からは車で20分の場所にあります。

敷地に一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは温かみのあるレトロな建物たち。

1940年代に北欧の山小屋をイメージして建てられた木造建築の社屋です。

外壁の白とピンクを基調とした塗装は「女性の働き場」であるという創業者の意志の現れ。

窓が多い設計は、職人が新鮮な空気とたくさんの光を浴びて楽しく働けるよう配慮されたものです。


[自然光はじゅうたんの色を確認するのにも最適だという]

小高い場所にあり、眺めも抜群!正面には蔵王連峰が見えます。

オリエンタルカーペット社屋
[社屋は創業者自らが設計。山形県景観デザイン賞(建設・1949年)も受賞している]

2. 工房見学の様子

それでは工房見学スタートです!

・手織工房 |1日数センチに凝縮された職人技

まずは世界中を魅了する手織りじゅうたんの製作現場に、そっと足を踏み入れてみます。

オリエンタルカーペット手織り
[ 現在は7人の職人が古来の製法を大切に受け継いでいる]

製作図面を縦糸越しに見ながらひと結びずつ織り込み、専用の道具で密度を一定に整える。



ベテラン職人でも、玄関マットほどの大きさの手織りじゅうたんを織るのに、1日で進められるのはわずか7・8㎝ほど。

玄関マットなら、織り上るまでに約1か月ほどかかり、その後も様々な加工を施して初めて製品として世に生み出されるそうです。


次に、織り上げたじゅうたんに命を吹き込むカービング作業で、模様を立体的に整えていきます。


[わずかな刈り込みが全体の印象を左右する]

迷いなく毛先を刈っていく職人の技は見学人も思わず息を殺して見入ってしまうほど。

現在、国内で羊毛の手織りじゅうたんを製作できるのは2社のみ。

カービング

そのうちの1つが、ここ山形にあるオリエンタルカーペットなのです。

声を発することもはばかられるような繊細な作業が続く中、工房の中には糸を引揃える規則的な音だけがカタカタと鳴り響きます。

その心地良い音には、この地で紡がれてきた歴史の重みが宿っていました。

糸を紡ぐ様子

・手刺工房 |正確さと力強さが光る技術

明るい日差しがたっぷりと注ぐ手刺工房内には、フックガンの小気味よい音が響いています。

  手刺工房

常に一定の力と間隔でまっすぐに羊毛を打ち込む職人の姿は、美しさと凛々しさにあふれ、つい見とれてしまいます。

手刺手元

工具を使いながらもその品質は手織りに近く、製作には熟練の感覚と高い集中力が必要です。

手書きや筆で書いたような”ゆらぎ”のある線を表現したじゅうたんもあります。

絨毯アップ
happy ocean (minä perhonen デザイン)

さらに、シルクや和紙など羊毛以外も一緒に織り込め、多彩なデザインや光沢感を生み出ます。


[ウールとシルクを使用した『KOKE』(隈研吾氏デザイン)]

・染色工房 |時を重ねても褪せない色彩

染色工房に近づくと、かすかに鼻先をかすめる染色独特の香りとシューっという蒸気音が聞こえてきました。

染色工房

オリエンタルカーペットでは創業当時から現在に至るまで自社で染色を行っており、そのストックはなんと2万色以上

80年前に織られた応接室のじゅうたんが今でも変わらず色鮮やかなのが、まさに品質の証です。

 応接室の絨毯

・マーセライズ工房|100年使い続けるために

マーセライズ工房は、マーセライズ加工やクリーニングを行う工房です。

マーセライズ加工とは、新品のじゅうたんをアルカリ性の液体に浸してブラッシングすることで、毛のツヤと密度が増し、より滑らかな踏み心地を実現します。

高品質なじゅうたんでなければ、この加工によってかえって耐久性が損なわれてしまいます。

また、ここには全国各地で使われていたじゅうたんが、“里帰り”してきます。

工房に戻ってきたじゅうたんは、一枚一枚丁寧にクリーニングやメンテナンスが施され、また新たな年月を刻み始めるのです。

メンテナンス小屋
[マーセライズ加工が出来るのは、日本国内ではオリエンタルカーペットのみ]

品質へのこだわり、そして最後の仕上げまで“使う人の満足”を考える徹底ぶり。

その姿勢こそが、オリエンタルカーペットの誇りであり、90年続く信頼の礎なのだと感じずにはいられません。

・資料室|じゅうたんが彩ってきた歴史に触れる

品質こそ、デザインなり。

90年もの歳月、徹底した品質主義を貫いてきたものづくりの精神は、日本国内外の歴史的な場面に静かに寄り添い、足元を支え続けてきました。

資料室には、
戦艦大和の長官室
・戦後GHQ (連合国軍総司令部) の最高司令官マッカーサーが使用していた部屋
バチカン宮殿法王謁見の間
皇居新宮殿
歌舞伎座

など、名だたる空間に納入されたじゅうたんの見本やエピソードなど貴重な資料が展示されています。

東北随一の芸術ホールを有する「やまぎん県民ホール (山形県総合文化芸術館)」の緞帳もオリエンタルカーペットの製作です。


※2019年12月28日緞帳見学会にて撮影

山形の「過去・現在・未来」をイメージし、紅花や山々の自然が、なんと182色もの糸で緻密に表現されています。

緞帳の一部には、県花である紅花で染め上げた糸を使用。

温かみのある赤”が、緞帳に深みを添えています。

紅花染め
[紅花色素の3%しかない「深紅」を使用]

3. ショールーム|暮らしに寄り添う一枚と出会う

オリエンタルカーペットの自社ブランド「山形緞通」の製品をゆっくりと眺められるショールームに案内していただきました。

オリエンタルカーペットショールーム
[昭和初期の梁や高窓を最大限に生かした空間]

手のひらで撫で、足の裏で感じる、その質感。

ふんわりと沈み込みながらも密度が高く芯のある弾力は、オリエンタルカーペット製ならではの贅沢さです。

ここでは、見た目だけでは伝わらない“質の違い”を存分に体感できます。

ショールームではぜひ手織りじゅうたんの裏面もチェックしてみてくださいね!手織りのじゅうたんは裏まで圧倒的に美しいです。

絨毯の裏
[裏に模様がでるのは手織りじゅうたんならでは]

オリエンタルカーペットのじゅうたんは、創業当時の中国柄から戦後の洋柄時代を経て、現在の暮らしに馴染む山形緞通のデザインへとバトンが渡されてきました。

現代シリーズ絨毯
[鮮やかな色のグラデーションが美しい『現代ライン』]

住まいに馴染む無地からインテリアの主役になるじゅうたんで、幅広いラインナップを実際に手に取りながら選べます。

UMI
[人気製品である『UMI』は、フェラーリなどのデザインで知られる世界的な工業デザイナー奥山清行氏のデザイン]

じゅうたんの残糸を使ったクッションも展示されていました。

残糸のクッション

高い弾力性があり、手に吸い付くような滑らかな触り心地がやみつきに。

残糸を使ったクッションは、年に数回のみ開催される展示会か工房見学でしか購入出来ないため、気に入ったものと出会えたら即GETがオススメです!

4. メッセージ

「じゅうたんといえば寒い冬に敷くイメージがあるかもしれませんが、実は夏も快適に過ごせるものなんです」

そう語ってくれたのは、オリエンタルカーペットの取締役であり、総務部長を務める金子明彦さん。

金子総務部長

羊毛は断熱性に優れ、空気をたっぷり含んでいるため湿気を吸収し、素足でもべたべたせず快適に過ごせるといいます。

また、消音性も高く、ほこりを吸着しオールシーズン清潔な住環境をキープしてくれる効果も期待できるんだとか。

最後に、VISIT YAMAGATAをご覧の皆様にメッセージをいただきました。

「社屋から眺める山辺の風景、職人の手仕事、そしてじゅうたんが仕上がるまでのすべてのストーリーを丸ごと体感していただけたらと思っています。

オリエンタルカーペットのじゅうたんを”すごいもの”ではなく、”日常の中に取り込める素敵なもの”として手に取ってもらえたら嬉しいです。

ぜひ工房見学で手触りや踏み心地の違いを体感してください」

5. 基本情報

オリエンタルカーペット株式会社
〈営業時間〉
9時〜17時
〈定休日〉
指定土曜・日曜・祝日

● 工房見学・山形ショールームともに事前予約必須
〈予約可能日〉
週木曜日と金曜日、隔週土曜日
〈予約方法〉
公式HPから申込

〈駐車場〉
正門入って右手にある砂利敷きの箇所または駐輪場の前をご利用ください。

オリエンタルカーペット駐車場

詳細情報

オリエンタルカーペット株式会社

オリエンタルカーペット株式会社

〒990-0301
山形県東村山郡山辺町大字山辺21番地

023-664-5811023-664-5811

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