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【特集記事】やまがたに息づく茶の文化 こだわりを極めた茶室「宝紅庵」に迫る

  • 2019.08.28
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VISIT YAMAGATA編集部

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こんにちは!VISIT YAMAGATA編集部です。 やまがた各地域のイベント情報や観光スポットなどのまとめ記事を定期的に発信しています。 また知る人ぞ知るやまがたのディープな情報もご紹介しています。

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山形駅から東に向かう道路を少し住宅街に入ったところに「もみじ公園」があります。
江戸時代に発達した池泉回遊式(池とその周辺を巡る園路を中心に作庭した庭)の庭はたいへん美しく、
特に秋の紅葉の季節は、見事な色彩が多くの人たちの心を魅了します。

このもみじ公園内にある清風荘・宝紅庵は、昭和54年に建てられた数寄屋作りの茶室で、週末にはお茶会が開かれています。
その建物は日本建築の美が感じられ、随所に職人さんのこだわりを感じます。

今回は裏千家の名誉師範、志賀宗秀先生に建物の中をご案内頂きました。

実際の市民茶会の様子を交えながら、宝紅庵の魅力をお伝えします。

<取材協力>
・山形市企画調整部文化振興課
・茶道裏千家 名誉師範 志賀宗秀 先生

1.清風荘とは

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清風荘の建物は明治維新以前は宝幢寺(ホウドウジ)という真言宗の寺院でした。
植木市で有名な出羽国分寺薬師堂は宝幢寺の本堂を明治45年に移設したものです。

山形城主最上義光は、宝幢寺住職(尊海)を深く信頼していたと伝えられています。
義光以後の代々の山形城主もこの寺を崇拝していたそうです。

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清風荘は書院造りという様式で建てられています。
書院(書斎)が建物の中心におかれた住宅のことです。

ちなみに寝殿が中心にある住宅を寝殿造りと言います。
平等院鳳凰堂などが有名です。

この写真のように上座・下座が設けられ身分階級が明瞭に示されているのも特徴です。
時代劇を見るとお殿様が上座に座っている姿を目にしますね。

2.宝紅庵とは

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宝紅庵は昭和54年に建てられた公共茶室※で、設計は中村昌生氏によるものです。
中村氏は茶室研究の第一人者であり、その功績は日本の木造建築において多大なものがあります。

建築雑誌編集者である立松久昌氏は「中村の作品の中では山形市宝紅庵が最も良い」と評しており、公共茶室の先駆けとなったこの建物は、中村氏の魂が伺えます。

建物は数寄屋造りで、随所に日本建築の奥深さを感じる建物です。

※公共茶室とは
市民の公共利用を目的とし、流派を超えて使用することが出来る茶室

●数寄屋造り

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宝紅庵は数寄屋造りという建物。

書院造りに比べると、質素ながら自由で洗練されています。

こうした様式はその後「わびさび」と呼ばれ、日本文化を語る上で欠かせない要素となりました。

■茶室(4畳半)

茶室は8.5畳の広間と4畳半の二部屋。

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4畳半の茶室は大変趣があり、照明もまるでロウソクの灯りのような柔らかい光が包んでいました。

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客人は躙り口(にじり口)と呼ばれる約60cm~70cmほどの入り口から入ります。

千利休の時代、このにじり口を通るには刀を外さなければならず、茶室の中では身分を超えて平等という意味あいがあったそうです。

この狭い空間のなかで、秀吉と利休はどんな話をしたのか。
今となってはわかりませんが、とても気になります。

●天井

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天井は網代天井。
杉を互い違いにくぐらせて編んだものを張った天井です。

そのため忍びの者が天井裏に隠れることが出来ないため、茶会に訪れた武将たちの身の安全も確保されていたとか。

戦国時代ならではですね。

4.茶室(広間)

●庭(露地)

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宝紅庵の庭は「露地」と呼ばれ、もみじ公園の「池泉回遊式」の庭とは趣が異なります。

作られ整えられた庭ではなく、自然の風景をそのままに再現したようなお庭です。

お茶会が催される時は、葉の一枚一枚を丁寧に拭いて客人を迎える事もあるのだとか。
ここにも茶道のおもてなしの心が伺えました。

●京間畳

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京間畳という畳で、通常私たちが使用している江戸間よりも大きいサイズになります。

茶室の畳には役割があり、「畳の目」は道具や茶碗を置く目安として重要だそうです。

畳の短手の目数は64目と決まっているとのこと。

品質のよい畳は正座をしても足が痛くなりにくいそうです。
どんな感じか体感してみるのも良いかもしれませんね。

●障子

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障子紙に使用されているのは、白鷹町の深山和紙です。
一般的な障子紙とは違い、手漉き和紙は何とも味わいがあります。

紙の合わせ目が模様のようで美しいですね。
これは「石垣貼り」という特殊な貼り方で、この貼り方ができるのは山形県にたった一人とのこと。

貴重なしつらえを間近に見ることができます。

●襖

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水紋柄の襖紙の取っては紅葉の葉模様が使われています。

もみじ公園に由来しているそうです。

水面に浮かぶ紅葉のようですね。

●欄間

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欄間の模様はもみじと松。

もみじは杉の木を松は桐を使用しているそうです。

2種類の異なった木材が重なり合って、奥行きを感じます。

●しぼり丸太

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床柱に使用されているのは、天然のしぼり丸太。

表面は自然に造られた波状のしわのような文様を持った杉丸太で、突然変異によって極まれにしか手に入らない貴重なものだそうです。

まっすぐに伸びた姿がとても美しく感じました。

京都に行かなくても、ここだけの特別な素材で作られた「本物」の茶室を見られるのは、かなり贅沢なこと!

宝紅庵を訪れた時は、この美しい職人の技を見てみるのも楽しいかもしれませんよ。

5.市民の茶会

毎月第三土曜日に行われている市民の茶会。

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作法がわからなくても気軽にご参加いただけます。
一服600円です。

●茶会の様子

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お子さんもいらしてますね。
子供の頃から日本文化に触れるのは、貴重な体験ですよね。

作法がわからなければ、周りの人の真似をしてみるのも良いかもしれません。

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お茶会では正客(しょうきゃく)と言われる招かれた客の代表となる人がいます。

写真の一番左側でお辞儀をされている方がそうです。

正客は他のお客さんに代わってお礼を言ったり、用意されているお道具やお抹茶、お花、お軸について尋ねます。

本日のお茶会のテーマなど、ご亭主(もてなす側)の思いを是非感じ取ってみてくださいね。

詳細情報

市民茶会・月釜・日釜(宝紅庵)

市民茶会・月釜・日釜(宝紅庵)

詳しくはこちらから

6.鈍翁茶会

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宝紅庵建設にあたり、山形県出身で小田原在住の方より、近代の大茶人益田鈍翁遺愛の蹲踞(つくばい)、灯篭、庭石など一式の寄贈を受けました。

昭和60年6月これを記念し、山形市の全面的なバックアップと流派を超えた一致団結のもと第一回鈍翁茶会が開かれました。

その後毎年さくらんぼの時期(6月20日過ぎの土日)に開催されています。

今では全国各地から茶道愛好家が多数集結する、日本三大茶会の一つです。

詳細情報

鈍翁茶会

鈍翁茶会

7.まとめ

利休百首に「茶の湯とは ただ湯をわかし茶をたてて のむばかりなる事と知るべし」
という句があります。

ごくごく当たり前が決して簡単ではないこと。
一椀のお茶に客をもてなす心が込められていること。

現代にも通じるおもてなしの心は、時を超えて日本人の心に受け継がれているのだと思います。

お茶会での出会いは一期一会、こんな身近に体験が出来るところがあるのですから、一度茶道の世界を味わってみてはいかがでしょうか。

※新型コロナウイルスの感染拡大により、営業時間・定休日・営業形態が本記事と異なる場合があります
 最新の営業状況や感染予防対策につきましては、事前に直接お問合せください

詳細情報

清風荘・宝紅庵 / もみじ公園

清風荘・宝紅庵 / もみじ公園

山形県山形市東原町2丁目16−7

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